症例報告
自然退縮を来した肉腫様変化を示す肝細胞癌の1例
松永 和哉, 上坂 克彦, 前田 敦行, 金本 秀行, 古川 敬芳*
静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科, 同 画像診断科*
症例は71歳の女性で,C型肝硬変の経過観察中,肝外側区域から肝外へ発育する11 cm大の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCC)および腹膜播種結節を認めた.前医で肝動脈塞栓術が施行されたのち紹介された.急速に発育し腹腔内破裂を来したHCCと診断し,肝外側区域部分切除,脾・胃壁・左横隔膜合併切除,右横隔膜下播種結節切除を施行した.切除標本の病理組織学的検索で肉腫様HCCと診断した.切除後2か月のCTで腹膜播種再発を認めた.全身状態を考慮し経過観察としていたところ,術後4か月目のCTで,腫瘍はかなりの部分自然退縮した.自然退縮は約4か月間持続したが,その後は再度急速に増大し,最後は胃への直接浸潤による消化管出血で失った.この間,一部の再発巣は完全消退のままであった.一般に,肉腫様変化を来したHCCは急速に発育し不良であり,本症例のように自然退縮を来すことは極めてまれと考えられた.
索引用語
sarcomatous hepatocellular carcinoma, spontaneous regression, peritoneal dissemination
日消外会誌 40: 1921-1926, 2007
別刷請求先
松永 和哉 〒411-8777 駿東郡長泉町下長窪1007 静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科
受理年月日
2007年5月30日
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