症例報告
直腸肛門部癌術後に骨盤内リンパ嚢腫から静脈血栓塞栓症を発症したと考えられた2例
荻野 崇之, 大植 雅之, 能浦 真吾, 山田 晃正, 宮代 勲, 矢野 雅彦, 大東 弘明, 佐々木 洋, 石川 治, 今岡 真義
大阪府立成人病センター消化器外科
症例1は44歳の男性で,肛門縁より7 cmにわたる4型腫瘍で生検の結果がsignet-ring cell carcinomaであり,術前CRT後に腹会陰式直腸切断術,側方郭清を施行.術後20日目に右下肢の浮腫,疼痛が出現しCTにて骨盤内リンパ嚢腫および右外腸骨静脈~大腿静脈に血栓を認めた.抗凝固療法およびリンパ嚢腫のドレナージを施行後,症状は改善した.症例2は54歳の女性で,術前CTで側方リンパ節転移を認め,CRT後に腹会陰式直腸切断術,側方郭清,膣後壁合併切除を施行.術後42日目より労作時呼吸困難が出現し,CT,USにて肺塞栓,両側外腸骨静脈の血栓および骨盤内リンパ嚢腫を認めた.永久型下大静脈フィルターを留置し,抗凝固療法,血栓溶解療法およびリンパ嚢腫のドレナージを施行後,症状は改善した.2症例とも骨盤内リンパ嚢腫による外腸骨静脈圧排像を認めており,リンパ嚢腫と静脈血栓塞栓症との関連が示唆された.
索引用語
anorectal cancer, lymphocele, venous thromboembolism
日消外会誌 40: 1972-1976, 2007
別刷請求先
荻野 崇之 〒537-8511 大阪市東成区中道1-3-3 大阪府立成人病センター消化器外科
受理年月日
2007年5月30日
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