症例報告
膵液瘻管空腸吻合術後吻合部狭窄を来し膵管空腸吻合術を要した外傷性膵損傷の1例
柴崎 正幸, 万代 恭嗣, 日下 浩二, 伊地知 正賢
社会保険中央総合病院外科
症例は27歳の女性で,男性から胸腹部を殴打された.腹部CTにて膵頭部の腫大とリング状低濃度域を認め,外傷性膵損傷と診断した.当初,保存的治療を行ったが右下腹部に膵仮性嚢胞を形成した.経皮ドレナージを施行し瘻孔化したが,ドレーン造影にて膵体尾部の主膵管が明瞭に造影された.保存的治療での治癒は望めないと判断し,膵液瘻管空腸吻合術を施行した.しかし,術後1年以降に膵炎を頻発し,MRCPにて同吻合部が狭窄し,膵体尾部主膵管の拡張を認めた.膵炎予防と膵内外分泌能の保持を目的に,再手術(膵管空腸吻合術)を施行した.膵液瘻に対する膵液瘻管空腸吻合術は低侵襲で有用な術式であるが,瘻孔がもともと瘢痕組織で独自の栄養血管を持たないため,血流不全による狭窄や壊死を起こしやすいことも指摘されている.今回,膵液瘻管空腸吻合術では長期の開存が得られず,膵管空腸吻合術が有効であった1例を経験した.
索引用語
traumatic injury, pancreas, pancreaticojejunostomy
別刷請求先
柴崎 正幸 〒169-0073 新宿区百人町3-22-1 社会保険中央総合病院外科
受理年月日
2007年7月25日
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