十二指腸・下大静脈を圧排する静脈原性後腹膜真性血液嚢胞の1例

春田　直樹, 岡田　和郎, 林　雄三^＊

仁鷹会たかの橋中央病院外科, 同　病理部^＊

　症例は78歳の男性で，2004年9月腹部CTにて後腹膜嚢胞性腫瘤を指摘された．その後，腫瘤増大傾向を認めたため，手術目的に入院した．血液検査では腫瘍マーカーはいずれも基準範囲内であった．腹部CTおよびMRIでは，十二指腸水平部を下方より，腎下部下大静脈を右前方より圧排する長径6 cmの嚢胞性腫瘤を認めた．2006年6月，経腹的に嚢胞摘出術を施行した．摘出標本の重量は94 g，最大径6.4 cmで，嚢胞壁は薄く，内容液は淡黄色，漿液性であった．病理組織学的検査所見では嚢胞壁，内容液に悪性所見はなかった．Masson trichrome染色Elastica-van Gieson染色で，脈管由来と診断し，CD31，CD34，FactorVIII，D2-40染色検査にて静脈由来の真性血液嚢胞（限局性静脈拡張症）と診断した．術後12病日に軽快退院し，再発は認めない．静脈由来の後腹膜嚢胞はまれであり，報告する．

索引用語
venous aneurysm, venous dilatation, retroperitoneal tumor

別刷請求先
春田　直樹　〒730-0042　広島市中区国泰寺町2-4-16　たかの橋中央病院外科

受理年月日
2007年9月26日

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