肝細胞癌孤立性大動脈周囲リンパ節転移の1切除例

山井　礼道, 吉田　卓弘, 清家　純一, 本田　純子, 三好　孝典, 武知　浩和, 湯浅　康弘, 梅本　淳, 丹黒　章, 島田　光生

徳島大学病院外科

　肝細胞癌の孤立性大動脈周囲リンパ節転移に対し，切除を行い良好な経過を得た症例を経験したので報告する．症例は60歳代の男性で，C型肝炎を経過観察中の2005年に腹部超音波検査で肝内腫瘤を指摘され当院紹介となった．CTで肝内に4 cmと4.5 cmの肝細胞癌を2個認め，大動脈周囲に2.8 cmの孤立性腫瘤を認めた．大動脈周囲の孤立性腫瘤はリンパ節転移を疑ったが，鑑別診断に難渋したため，肝内病変の治療を先行し，経皮的局所療法を施行した．2か月の経過観察中に大動脈周囲の腫瘤は著明に増大傾向を示した．リンパ節転移としても孤立性であり，また，下大静脈と接することより，今後増大すれば予後因子と成りうると判断し，切除を行った．術後経過は良好で，術前2,685 ng/mlと高値を示したAFPは3か月後には3 ng/mlと著明に低下した．現在2年を経過するがAFPの上昇，再発は認めていない．肝細胞癌大動脈周囲孤立性リンパ節転移の報告はまれであり報告する．

索引用語
solitary lymph node metastasis, hepatocellular carcinoma, paraaortic lymph node metastasis

別刷請求先
山井　礼道　〒770-8503　徳島市蔵本町3-18-15　徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生体防御腫瘍医学講座病態制御外科学

受理年月日
2007年9月26日

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