症例報告
虫垂真性憩室症の1例
高橋 亮, 金子 猛, 中山 昇, 片岡 佳樹, 鷲田 昌信, 山崎 誠二, 梶原 建熈
浜松労災病院外科
症例は82歳の女性で,下腹部痛を主訴として受診した.腹部CTにて回盲部尾側にブドウ房状の造影効果を伴う嚢胞様構造物を認め,急性虫垂炎または虫垂腫瘍が疑われたため,虫垂切除術を施行した.摘出標本に硬結を認め,同部位に憩室が存在した.病理組織学的検査では虫垂先端部のみに急性炎症所見を認め,憩室部は慢性炎症を伴う真性憩室であった.無症候性虫垂真性憩室を伴った急性虫垂炎と最終診断した.虫垂真性憩室はまれな疾患で,本邦報告は自験例が6例目となる.一般に,虫垂憩室症は炎症を伴うと穿孔率が27~66%に達するとされ,無症状で発見された場合に予防的虫垂切除を推奨する主張がみられる.しかし,その根拠は不正確な文献引用に拠っており,また65歳以上の高齢者では急性虫垂炎の穿孔率も41~77.8%と高く,虫垂憩室症のみ一律に予防的虫垂切除を勧める根拠は薄いと考えられた.
索引用語
appendiceal diverticulosis, true diverticulum, prophylactic appendectomy
別刷請求先
高橋 亮 〒430-0802 浜松市東区将監町25 浜松労災病院外科
受理年月日
2007年10月29日
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