臨床経験
痔瘻癌7例の臨床病理組織学的検討
田嶋 ルミ子, 横山 幸生, 有馬 信之*, 馬場 憲一郎, 松田 正和
熊本市民病院外科, 同 病理*
1989年から2005年までの17年間に当科にて経験した痔瘻癌7例の臨床病理組織学的特徴と治療成績の検討を行った.男性5例,女性2例,平均年齢67歳.痔瘻から癌発見までの平均期間は26.4年.全例に肛門部痛を認め,痔瘻分類はII Ls症例4例,他は不明であった.平均腫瘍最大径は55 mm,組織型は粘液癌が5例,stage II以上の進行例が6例で,仙・尾骨,肛門挙筋などへの浸潤のためradial marginが不十分となったものは3例に及んだ.全症例に腹会陰式直腸切断術を施行し,術後化学療法3例,術後放射線治療も3例に行われた.無再発生存例はわずか2例で,肺転移のみの1例に化学療法を施行中である.局所再発例の4例は全例死亡し,平均生存期間は2.3年であった.局所再発は予後不良因子であり,治療成績向上のためには早期発見と十分な断端確保を目指した治療方法の選択が肝要である.断端確保が困難な症例には術前放射線化学療法の展開が望まれる.
索引用語
carcinoma associated with anal fistula, chemotherapy, radiation
別刷請求先
田嶋ルミ子 〒862-0965 熊本市田井島1-5-1 熊本中央病院外科
受理年月日
2007年10月29日
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