症例報告
鈍的外傷後に診断された胸部下部食道破裂の1例
境 雄大, 佐藤 浩一, 今 昭人, 須藤 泰裕
弘前市立病院外科
慢性関節リウマチでメトトレキセートを内服中の71歳の女性が,昼食後に入浴し,立ち上がった際に意識を消失して転倒した.意識は回復したが,強い胸痛と呼吸苦が出現したため,当院へ搬入された.胸部CTで左気胸,左胸腔内の食物残渣状の胸水貯留,胸部下部食道壁の肥厚を認めたが,外傷性変化は見られなかった.胸腔ドレナージ後に内視鏡検査で胸部下部食道に穿孔を確認し,緊急手術を行った.開胸すると食物残渣を混じた胸水が貯留しており,胸部下部食道左側壁に3.5 cmの穿孔を認めた.1期的縫合閉鎖,洗浄,ドレナージを行った.術後食道造影X線検査では縫合不全や狭窄はなく,食事摂取も良好であった.創感染と日常生活動作の低下により入院が長期化したが,術後58日目に退院した.自験例では意識消失・転倒に先行した腹腔内圧上昇につながる症状はなく,食道破裂の成因は転倒による圧上昇と推測された.鈍的外傷では食道破裂も念頭におく必要がある.
索引用語
blunt trauma, esophageal rupture, methotrexate
別刷請求先
境 雄大 〒036-8562 弘前市在府町5 弘前大学胸部心臓血管外科学講座
受理年月日
2007年11月28日
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