症例報告
胆管癌と鑑別の困難であった潰瘍を伴う慢性胆管炎の1例
白潟 義晴, 佐々木 直也, 篠原 尚, 糸井 和美, 福山 学, 西川 秀文, 水野 惠文, 三村 六郎*
兵庫県立尼崎病院外科, 同 病理部*
症例は80歳の女性で,右季肋部痛にて近医受診し肝胆道系酵素の上昇と胆嚢の腫大,上部胆管の拡張を指摘され当科入院となった.腹部造影CTにて胆嚢の腫大,肝内肝外胆管の拡張を認めたが明らかな腫瘤像を指摘できず,MRCPにて胆嚢の腫大,上部胆管の拡張と下部胆管でのV字型狭窄を認めた.経皮経肝胆嚢ドレナージを施行した際の直接胆道造影でも下部胆管は造影されなかったため,下部胆管癌の可能性が高いと判断し手術を施行した.中下部胆管に3 cm大の腫瘤を認め胆管周囲に著明なリンパ節の腫脹を認めた.腫瘤は門脈と一部強固に癒着しており剥離不可能のため門脈壁を一部楔状に切除し亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的診断は慢性胆管炎に伴う胆管潰瘍で悪性所見を認めなかった.術後経過は良好であった.慢性胆管炎に伴う胆管潰瘍の報告はなく本症例は極めてまれと考えられた.文献的考察を加え報告した.
索引用語
chronic cholangitis, ulcer of the bile duct, bile duct cancer
別刷請求先
白潟 義晴 〒660-0828 尼崎市東大物町1-1-1 兵庫県立尼崎病院外科
受理年月日
2007年11月28日
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