症例報告
Budd-Chiari症候群にて発症した胆管細胞癌の1例
若井 俊文, 白井 良夫, 坂田 純, 井上 真, 皆川 昌広, 宗岡 克樹*, 畠山 勝義
新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野, 新津医療センター病院外科*
症例は63歳の男性で,息切れ,腹部膨満を主訴に近医を受診し,精査にて肝上部下大静脈の全周性狭窄によるBudd-Chiari症候群と診断された.狭窄部周囲に軟部影を認め,悪性腫瘍を否定できないため試験開腹術を施行した.肝S8に下大静脈に浸潤する径5 cmの腫瘤(生検では中~低分化型腺癌)を認め,肝内腫瘤と連続する肝外の間質浸潤が下大静脈を巻き込んだためにBudd-Chiari症候群が生じたものと考えられた.高度リンパ節転移,腹膜播種のため切除不能と判断された.全身検索で他に悪性腫瘍を認めないこと,腫瘍細胞がサイトケラチン7強陽性であることから胆管細胞癌の診断が確定した.全身化学療法(gemcitabine+irinotecan)を行ったが,化療開始から8か月目に原病死した.Budd-Chiari症候群にて発症した胆管細胞癌の報告は6例(自験例を含む)とまれであり,Budd-Chiari症候群の原因検索の際に留意すべきである.
索引用語
cholangiocellular carcinoma, intrahepatic cholangiocarcinoma, Budd-Chiari syndrome
別刷請求先
若井 俊文 〒951-8510 新潟市中央区旭町通1-757 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野
受理年月日
2007年12月19日
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