症例報告
プロテインC欠乏症に起因した下腸間膜静脈血栓症の1手術例
豊島 明, 遠藤 健, 永岡 栄, 丸山 嘉一, 酒井 敬介, 磯山 徹, 武村 民子*
日本赤十字社医療センター外科, 同 病理*
症例は22歳の男性で,排便困難・下血・下痢を主訴に内科を受診.その後,左下腹部痛を生じ入院.左下腹部痛は徐々に増悪し腸管の循環障害による機械的な腸閉塞を疑い,第5病日に転科,同日緊急開腹手術を施行した.開腹時,下行結腸から直腸まで鬱血,浮腫,変性硬化を来しており,炎症は下腸間膜動静脈根部にまで及んでいた.腸管壊死は認められず,腸間膜の循環障害と診断し,双孔式横行結腸人工肛門造設術を施行した.術後,血液検査と血管造影検査にて,プロテインC欠乏症に起因した下腸間膜静脈血栓症と診断された.術後約2年間経過良好であったが大腸狭窄は改善せず,拡大結腸左半切除術,上行結腸直腸端々吻合術を施行した.切除標本では狭窄部の粘膜欠損,粘膜下層の線維化,漿膜下静脈の著明な内腔狭窄がみられた.現在抗凝固療法を継続し,経過良好である.プロテインC欠乏症に起因した下腸間膜静脈血栓症は,検索した範囲では2例目であった.
索引用語
mesenteric vein thrombosis, inferior mesenteric vein thrombosis, protein C deficiency
別刷請求先
豊島 明 〒150-8935 渋谷区広尾4-1-22 日本赤十字社医療センター外科
受理年月日
2007年12月19日
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