成人仙骨前類表皮嚢胞の1例

塚本　好彦, 佐溝　政広, 高橋　徹也, 前川　貴代, 宮下　勝

甲南病院外科

　症例は31歳の女性で，不正性器出血で来院．直腸指診にて，肛門縁から約3 cmの直腸右後方に表面平滑，弾性軟，可動性不良の腫瘤を触知した．注腸造影，大腸内視鏡検査にて下部直腸に右背側よりの圧排所見があり，CT，MRIで仙骨前面に63×47×80 mm大の嚢胞性腫瘤を認めた．仙骨前嚢胞性腫瘍と診断し，経仙骨的に腫瘍を摘出した．摘出標本は表面平滑の単胞性嚢胞であり，腫瘍性部分を認めず，内容は白色粘調液であった．病理組織学的標本では嚢胞壁内面は重層扁平上皮からなり，皮膚付属器は認めず，仙骨前類表皮嚢胞（presacral epidermoid cyst）と診断した．仙骨前類上皮嚢胞の本邦報告は，自験例を含め過去に57例のみであった．感染や扁平上皮癌を合併することがあり，腫瘍の完全摘出が必要である．腫瘍の位置，進展方向，大きさを考慮し適切なapproach方法を選択すべきであると考える．

索引用語
epidermoid cyst, presacral tumor, adult

別刷請求先
塚本　好彦　〒658-0064　神戸市東灘区鴨子ヶ原1-5-16　甲南病院外科

受理年月日
2007年11月28日

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