症例報告
正中弓状靭帯による腹腔動脈起始部狭窄を伴う十二指腸乳頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行した1例
最上 希一郎, 市原 利晃, 佐藤 勤, 柴田 聡, 高橋 智和, 阿部 ゆき, 山本 雄造
秋田大学医学部消化器外科
症例は55歳の男性で,十二指腸乳頭部癌と診断され,術前検査で正中弓状靭帯による腹腔動脈起始部の狭窄を認めた.手術の各時点において総肝動脈,胃十二指腸動脈,固有肝動脈の血流量を測定した.正中弓状靭帯の切離前は胃十二指腸動脈から固有肝動脈へは求肝性に,総肝動脈へは遠肝性に流れ,固有肝動脈の血流量は332 ml/minであった.正中弓状靭帯を切離後に胃十二指腸動脈を試験遮断したところ,総肝動脈の血流は求肝性となり固有肝動脈血流量は332 ml/minと十分な血流を確認できた.この後,胃十二指腸動脈を切離し,膵頭十二指腸切除術を行った.正中弓状靱帯による腹腔動脈幹狭窄を伴う患者に膵頭十二指腸切除術を行うにあたって術中に狭窄部開放に伴う血流動態の変化を測定することにより安全な手術が可能であった.
索引用語
median arcuate ligament, pancreatoduodenectomy, blood flow volume measurement
日消外会誌 41: 1588-1593, 2008
別刷請求先
最上希一郎 〒010-8543 秋田市本道1-1-1 秋田大学医学部消化器外科
受理年月日
2008年2月20日
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