症例報告
小腸膀胱瘻にて発症した回腸原発粘液腺癌の1例
村岡 曉憲, 鈴木 夏生, 勅使河原 修, 小松 義直, 田上 鑛一郎
愛知県厚生連渥美病院外科
症例は72歳の女性で,下腹部不快感を主訴に当院内科を紹介受診した.検尿で潜血反応が陽性であったので泌尿器科に紹介され,膀胱鏡を施行したところ,腫瘍を認めた.瘻孔造影上,腫瘍を介して,小腸―膀胱瘻を形成していた.組織検査結果は腺癌であった.組織型より小腸癌,あるいは卵巣癌の小腸膀胱浸潤と診断し,手術を施行した.回腸終末より約1 m口側の回腸が複雑に癒着し,腫瘍は一塊となって膀胱へ浸潤していた.子宮,両卵巣は正常であった.原発性小腸癌の膀胱浸潤と診断し,小腸部分切除,膀胱全摘術,回腸導管造設術を施行した.切除標本にて小腸膀胱瘻とともに小腸―小腸間にも腫瘍を介した瘻孔を認めた.病理組織学的検査結果は原発性小腸粘液腺癌であった.原発性小腸癌は消化管悪性腫瘍の中では発生頻度が低く,さらに本例のごとく膀胱小腸瘻にて発症したものは過去に報告を認めずまれであることから,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語
mucinous adenocarcinoma of the small intestine, vesicointestinal fistula, a high CA19-9 level
日消外会誌 41: 1631-1636, 2008
別刷請求先
村岡 曉憲 〒441-3415 田原市神戸町赤石1番地1 渥美病院外科
受理年月日
2008年1月30日
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