症例報告
術前診断に苦慮した限局性結節性過形成の1切除例
柴崎 晋, 横尾 英樹, 神山 俊哉, 中西 一彰, 田原 宗徳, 福森 大介, 臼井 章浩, 松下 通明, 藤堂 省
北海道大学消化器外科・一般外科
限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia;以下,FNH)は,時に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCC)と鑑別困難な症例がある.今回,我々は非典型的な画像所見を呈した1例を経験したので報告する.症例は41歳の女性で,心窩部痛を自覚し前医で肝腫瘍を指摘されるも確定診断がつかず,当科紹介.B型肝炎の既感染があったが,肝機能,腫瘍マーカーはすべて基準値内であった.造影CTでは肝S1に3 cm大のFNHに典型的な中心部に低吸収域を伴う高吸収域を認めた.Sonazoid造影USの早期相では車軸様血管を認めたがKupffer imageでは欠損を認め,SPIO-MRIでも同部の取込低下を認めた.以上より,HCCの可能性も否定できず,手術(高位背方尾状葉切除)を施行した.術中迅速診断で悪性所見はなく,病理組織学的検査にてFNHと診断された.FNHではKupffer細胞が画像的に証明されない症例があり,HCCとの鑑別のためには切除などによる組織診断が重要である.
索引用語
focal nodular hyperplasia (FNH), hepatocellular carcinoma (HCC), Kupffer cell
日消外会誌 41: 1692-1697, 2008
別刷請求先
柴崎 晋 〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目 北海道大学医学部消化器外科・一般外科
受理年月日
2008年3月26日
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