症例報告
Gastrointestinal stromal tumorとの鑑別が困難であった腸間膜線維腫症の1例
保坂 晃弘, 山崎 一樹, 青木 文夫, 正木 幸善
青梅市立総合病院外科
症例は41歳の女性で,下腹部痛を主訴に近医を受診し,CTにて腹部腫瘤を指摘され,当院紹介となった.腹部超音波検査,CT,下部消化管内視鏡検査などで横行結腸粘膜下腫瘍と診断し,開腹術を施行した.横行結腸筋層に連続する最大径4.2 cmの腫瘍を認め,病理組織学的には紡錘形の腫瘍細胞の増生からなっており,gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と診断した.術後1年8か月のCTにて同部位に径5 cm大の腫瘤を指摘され,GIST再発を疑い,再度開腹術を施行した.前回吻合部を巻き込む腫瘍を認め,初回手術時の標本を含めて再度検討した結果,病理組織学的に初回,2回目手術時ともに病変は腸間膜線維腫症と診断された.腸間膜線維腫症は,高分化な線維組織よりなる腫瘍で,局所で浸潤性増殖を示し,しばしば再発する.特に,腸管に浸潤した場合は,病理組織学的にもGISTと酷似し,鑑別診断が困難なことも多い.本症例について,文献的考察を加えて報告する.
索引用語
mesenteric fibromatosis, desmoid tumor, GIST
日消外会誌 41: 1716-1722, 2008
別刷請求先
保坂 晃弘 〒198-0042 青梅市東青梅4-16-5 青梅市立総合病院外科
受理年月日
2008年2月20日
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