症例報告
アラジール症候群と診断され長期経過観察中の患者に発生した肝細胞癌の1例
増田 雄一, 三輪 史郎, 名取 恵子, 宮川 雄輔, 横井 謙太, 鈴木 史恭, 横山 隆秀, 小林 聡, 宮川 眞一, 田中 榮司*
信州大学医学部付属病院消化器外科, 同 消化器内科*
アラジール症候群(Alagille syndrome;以下,AGS)は常染色体優性遺伝の疾患で,特異な顔貌,心血管異常,組織学的には肝内胆管の消失・低形成などが特徴とされる.患者は49歳の男性で,10歳時に当院にて開腹肝生検を施行され,肝内胆管消失を認めAGSと診断されて以降,近医にて治療経過観察されていた.49歳時に腹部超音波検査にて肝右葉に巨大腫瘤を指摘され,検査目的に当科へ紹介された.精査にて肝腫瘍は肝細胞癌と診断され,肝切除術が施行された.術後経過は良好で術後第19病日に退院した.切除肝の肉眼検査所見上,腫瘍の最大径は12.5 cmで,部分的に壊死を認めた.病理組織学的検査上,腫瘍は中分化型肝細胞癌と診断され,背景肝に胆管消失はなく,慢性肝炎あるいは肝硬変の所見も認められなかった.AGSの長期観察症例,肝硬変非合併症例の肝細胞癌発生・切除の報告はまれであり,文献的考察を加えて報告する.
索引用語
alagille syndrome, hepatocellular caricinoma, intrahapatic bile duct
日消外会誌 41: 1803-1808, 2008
別刷請求先
増田 雄一 〒390-8621 松本市旭3-1-1 信州大学消化器外科
受理年月日
2008年3月26日
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