症例報告
術前診断しえた成人における腸回転異常に伴う中腸軸捻転症の1例
樫塚 久記, 高山 智燮, 井村 龍麿, 鎌田 喜代志, 岡山 順司, 久下 博之, 植田 剛, 北東 大督, 辰巳 満俊
星ヶ丘厚生年金病院外科
症例は24歳の男性で,腹部膨満,腹痛を主訴に近医を受診した.腸閉塞と診断,当科に紹介された.イレウス管を用いた上部消化管造影検査で十二指腸空腸移行部の位置異常および空腸の渦巻き様走行を認め,注腸検査で結腸の左側変位を認めた.さらに,腹部造影CTでSMAを中心に軟部組織が渦巻き状に取り巻くwhirl-like patternを認めたため,腸回転異常に伴う中腸軸捻転症と診断した.手術所見で中腸が約2回転半時計方向に軸捻転したnonrotation型であった.捻転部の腸管虚血所見を認めず,SMVの狭小化およびHenleの静脈幹に流入する副血行路の著明な発達を認めた.Ladd靭帯を切離,捻転を整復後,予防的虫垂切除を行った.腸回転異常は胎生期の中腸の回転および固定の異常に起因する先天異常であり,それに伴う中腸軸捻転症は新生児期に発症し治療されることが多く,成人発症例はまれであるが,これを念頭におき画像検査を進めれば術前診断は可能と考えられた.
索引用語
malrotation, volvulus
日消外会誌 41: 1827-1831, 2008
別刷請求先
樫塚 久記 〒573-8511 枚方市星丘4-8-1 星ヶ丘厚生年金病院外科
受理年月日
2008年4月23日
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