症例報告
同一領域に類基底細胞癌と腺扁平上皮癌を認めた食道癌の1例
南部 弘太郎1)3)4), 田中 洋一1), 坂本 裕彦1), 川島 吉之1), 網倉 克己1), 西村 洋治1), 黒住 昌史2), 渋谷 哲男3)4), 徳永 昭4)
埼玉県立がんセンター消化器外科1), 同 病理科2), 大宮医師会市民病院外科3), 日本医科大学武蔵小杉病院消化器病センター4)
我々は同一領域に類基底細胞癌と腺扁平上皮癌の病巣を認めた極めてまれな食道癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で,3か月前から嚥下困難が生じ,近医を受診,食道癌の診断で当院紹介となる.内視鏡検査では門歯から34 cmの部位に全周性の3型病変を認めた.生検で扁平上皮癌と診断し,胸腹部食道全摘術を行った.切除標本の病理組織学的検査所見では,広範囲の上皮内伸展を認め,上皮内癌巣の直下に類基底細胞癌成分が粘膜下層まで,腺扁平上皮癌成分が外膜まで別々に浸潤しており,上皮内では扁平上皮癌として連続しているものの,浸潤部分では移行像はなく衝突癌様の像を示していた.進行度は,pT3pN0M0 pStage II1)であった.本症例は,共通の上皮内伸展巣の直下に二つの特殊な組織型の浸潤巣を有する極めてまれな症例であり,病理発生としては,それぞれの浸潤巣は移行像がなく,同じ上皮内扁平上皮癌から別々に発生したものと推測された.
索引用語
esophageal cancer, basaloid (-squamous) carcinoma, adenosquamous carcinoma
日消外会誌 41: 1904-1909, 2008
別刷請求先
南部弘太郎 〒331-8689 さいたま市北区宮原町2-125-16 大宮医師会市民病院外科
受理年月日
2008年4月23日
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