症例報告
集学的治療により21か月間無増悪で経過中の脳転移,肩甲骨転移を有する胸部食道癌の1例
吉田 直矢, 佐藤 伸隆, 山本 謙一郎, 田中 真一郎, 大堂 雅晴, 栗崎 貴, 片渕 茂, 芳賀 克夫, 山下 眞一*, 池井 聰
国立病院機構熊本医療センター外科, 大分大学医学部腫瘍病態制御講座外科学第2*
症例は53歳の男性で,嚥下困難感を主訴に近医を受診され,上部消化管内視鏡検査で胸部食道癌(LtMt,2型)と診断された.当院での精査により左前頭葉と右肩甲骨に転移を認め,進行度はstage IVbであった.原発巣と肩甲骨に対して化学放射線療法を,脳転移巣には定位放射線治療(Novalis®)を施行した.治療終了後1か月目の精査で原発巣,転移巣ともに縮小し,新病変の出現を認めなかったため,胸腔鏡補助下食道亜全摘,2領域リンパ節郭清,胸骨後胃管再建を施行した.術後docetaxelによる化学療法を1クール追加した.治療開始から1年9か月経った現在,新病変の出現なく経過中である.初診時に遠隔転移を伴うstage IVb食道癌の予後は極めて不良であり,集学的治療を行っても本症例のように1年半以上無増悪で経過することはまれである.長期生存が見込めるstage IVb食道癌について,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語
esophageal cancer, distant metastasis, multidisciplinary therapy
日消外会誌 41: 1910-1915, 2008
別刷請求先
吉田 直矢 〒860-8556 熊本市本荘1-1-1 熊本大学消化器外科
受理年月日
2008年5月21日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|