症例報告
胃癌術後13年目に転移を来し切除しえた転移性大腸癌の1例
塩川 洋之, 船橋 公彦, 小池 淳一, 斉藤 直康, 栗原 聰元, 金子 奉暁, 白坂 健太郎, 後藤 友彦, 渋谷 和俊*, 寺本 龍生
東邦大学医療センター大森病院消化器外科, 同 病理*
転移性大腸癌は頻度0.1~1%とされまれな疾患である.今回,胃癌術後13年目に横行結腸に転移を来した異時性大腸転移を経験した.症例は69歳の女性で,食後の腹部違和感を主訴に来院した.注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査から横行結腸肝彎曲部の原発性びまん性大腸癌あるいは転移性大腸癌を疑った.拡大結腸右半切除術後,病理組織学的検査では13年前の胃癌と形態学的に一致した低分化腺癌で,免疫組織学的染色で粘液形質の染色パターンが一致したことから胃癌の転移と診断した.2001年~2006年にかけての54症例73病変の文献的検討では,胃癌による大腸転移は組織学的には印環細胞癌,低分化腺癌に多く,46.3%は術後5年以上経過してからの発見であった.大腸転移巣切除後死亡例の平均生存期間は平均16.6か月で転移発見の時期に関係はなかった.腫瘍マーカーは早期発見の指標にはならず低分化・粘液癌の胃癌のfollow upでは注意を要するものと考えられた.
索引用語
metastatic colon cancer, gastric cancer, poorly differentiated adenocarcinoma
日消外会誌 41: 1927-1934, 2008
別刷請求先
船橋 公彦 〒143-8541 大田区大森西6-11-1 東邦大学医療センター大森病院一般・消化器外科
受理年月日
2008年5月21日
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