症例報告
複数個の磁石誤飲により腸管に内瘻形成を来した成人の1例
西 佳史, 笹島 耕二, 松谷 毅, 宮本 昌之, 丸山 弘, 横山 正, 柳 健, 松田 明久, 柏原 元, 田尻 孝*
日本医科大学多摩永山病院外科, 日本医科大学外科*
症例は44歳の男性で,自閉症にて専門施設で精神医学作業療法を行っていた.約1週間持続する腹痛と微熱を主訴に近医を受診し,腹部X線検査で腹腔内異物を認めたため当科紹介となった.腹膜刺激症状は明らかでなかったが,血液生化学検査で著明な炎症所見を認め,自然排泄不可能な腸管内異物と診断し,緊急手術を行った.術中所見では径約1 cmの9個の磁石が腸管を介して結合し,内瘻を形成していた.瘻孔部を含めた十二指腸と空腸の一部を切除した後,十二指腸空腸側々吻合術,空腸空腸側々吻合術を行い,さらに空腸側から十二指腸内にドレナージ用のカテーテルを留置した.術後経過は良好であり,術後第13病日より経口摂取を開始し,第42病日に軽快退院となった.これまで,複数個の磁石を誤飲し腸管損傷を来した報告は,すべて乳幼児から学童であり,本症例がはじめての成人例の報告である.
索引用語
magnet ingestion, intestinal foreign body, intestinal fistula
日消外会誌 41: 2069-2074, 2008
別刷請求先
西 佳史 〒206-8512 多摩市永山1-7-1 日本医科大学多摩永山病院外科
受理年月日
2008年5月21日
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