症例報告
Dihydropyrimidine dehydrogenase欠損症と診断された大腸癌の1例
鷹羽 智之, 森山 仁, 横山 剛, 的場 周一郎, 澤田 壽仁
虎の門病院消化器外科
症例は72歳の男性で,2007年10月,直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を行った.術後診断はtub2,pSE,pN2(6/12),cH0,cP0,cM0,fStage IIIbであった.術後補助化学療法として24病日にUFT顆粒300 mg/日,ユーゼル75 mg/日の内服を開始した.高度の嘔気(grade3)を訴えたために6日間で内服中止としたが,重篤な白血球減少(grade4),血小板減少(grade3),粘膜障害(grade3)が出現し,内服開始日から28日後に多臓器不全で死亡した.尿中Uracil 593.0 μmol/g・creに対してdihydrouracilは2.1 μmol/g・creであり,dihydrouracil/uracil比0.004(基準値:0.23~0.67)と著しく低値であること,末梢血単核球dihydropyrimidine dehydrogenase(以下,DPD)活性値が感度以下であったことからDPD欠損症と診断した.本邦においてDPD欠損症はわずか6例の報告があるのみで非常にまれである.しかし,重篤な有害事象を招く恐れがあるため,DPD活性低下が疑われた場合はただちに投薬を中止し,速やかに支持療法を開始する必要がある.
索引用語
dihydropyrimidine dehydrogenase deficiency, 5-FU
日消外会誌 41: 2075-2080, 2008
別刷請求先
鷹羽 智之 〒105-8470 港区虎ノ門2-2-2 虎ノ門病院消化器外科
受理年月日
2008年5月21日
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