症例報告
4年間腸閉塞を繰り返した多発性狭窄を伴った特発性虚血性小腸炎の1例
三浦 世樹, 滝口 伸浩, 早田 浩明, 永田 松夫, 山本 宏, 浅野 武秀
千葉県がんセンター
症例は76歳の男性で,手術既往はなかったが,腹痛,食欲低下,体重減少を主訴に発症した.イレウスの診断にて保存的治療を行い軽快退院したが,以後4回イレウス症状により,入退院を繰り返した.腫瘍性病変および狭窄病変の確定ができず4年間経過した.その結果,著明な低栄養状態となり,当院へ紹介された.精査の結果,回腸に狭窄像を認め虚血性小腸炎疑いで手術を施行した.手術所見では回腸末端近傍に3か所の狭窄部を認め,狭窄部を含む90 cmの小腸切除術を施行した.組織学的検査所見より特発性虚血性小腸炎と診断された.術後経過は良好で,栄養状態も改善し術前の体重43.2 kgは60 kgと増加した.原因不明のイレウス症状をくりかえし,心血管系疾患,糖尿病などの基礎疾患や肝硬変など腸管循環に影響を及ぼす要因を有する場合,本疾患の存在も念頭に入れ,診断にあたりいたずらに時を過ごさず手術に踏み切ることが望ましいと考えられた.
索引用語
ischemic enteritis, ileus, stenosis
別刷請求先
三浦 世樹 〒260-8670 千葉市中央区亥鼻1-8-1 千葉大学臓器制御外科
受理年月日
2008年6月18日
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