症例報告
転移性直腸癌に対する血管新生阻害剤bevacizumab使用中に発症した腸管穿孔の1例
平田 敬治, 田上 貴之, 荒瀬 光一, 柴尾 和徳, 日暮 愛一郎, 中山 善文, 永田 直幹, 山口 幸二
産業医科大学第1外科
症例は53歳の男性で,直腸癌・同時性肝転移に対してMiles手術および全身化学療法(Folinic acid,Fluorouracil,Irinotecan;FOLFIRI)施行された後,2007年10月よりbevacizumabをFolinic acid,Fluorouracil,Oxaliplatin(FOLFOX)と併用で開始した.2008年1月,6コース目のbevacizumab投与2日後より発熱出現,その2日後右側腹部痛が出現し,CTで回盲部脂肪織濃度上昇とfree airを認め,腸管穿孔の診断で同日回盲部切除,1期的吻合を行った.肉眼的に盲腸憩室穿孔を認め,病理組織学的検査では憩室炎の所見を認めた.術後吻合不全なく経過したが,術創の皮下脂肪壊死を伴う創傷治癒遅延を合併した.血管新生阻害剤bevacizumabは抗癌剤との併用により治療効果を発揮するが,腸管穿孔,出血,血栓症など特異的な毒性も海外で報告されている.自験例での盲腸憩室穿孔とbevacizumabの因果関係を確定することは困難であるが,憩室炎はbevacizumab療法における消化管穿孔のリスクの一つにあげられており,腸管憩室を有する症例では治療時に細心の注意が必要であると思われた.
索引用語
metastatic colorectal cancer, bevacizumab, intestinal perforation
別刷請求先
平田 敬治 〒807-8555 北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1 産業医科大学第1外科
受理年月日
2008年6月18日
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