症例報告
人工肛門閉鎖創との皮膚瘻形成にて発見されたS状結腸癌の1例
佐々木 省三, 鎌田 徹, 竹下 雅樹, 能登 正浩, 尾山 勝信, 吉本 勝博, 神野 正博
恵寿総合病院消化器病センター
患者は42年前に腸骨骨髄炎にてS状結腸に人工肛門が造設され40年前に閉鎖された既往のある58歳の男性で,人工肛門閉鎖創からの膿排出を主訴に来院した.創部に便汁の排出を伴う瘻孔形成を認め,瘻孔造影検査,注腸透視検査では結腸癌による結腸皮膚瘻の形成と考えられた.内視鏡検査にてS状結腸に2型腫瘍を認め,生検にて腺癌と診断した.CT所見はS状結腸癌の腹壁浸潤であり,明らかな転移を認めなかった.腹壁浸潤,皮膚瘻を伴うS状結腸癌と診断し,リンパ節郭清を伴うS状結腸切除と腹壁合併切除を施行した.病理組織学的検査所見上,癌は皮下まで浸潤した中分化型腺癌であり,皮下膿瘍を介して皮膚瘻を形成していた.根治度はAであった.本症例は腹壁の筋膜欠損という脆弱な部位から癌が皮下まで浸潤し,膿瘍を介して皮膚縫合部に瘻孔を形成したものであり,皮膚瘻形成には手術創による腹壁の脆弱性が関与していると考えられた.
索引用語
colocutaneous fistula, colon cancer, abdominal wall abscess
別刷請求先
佐々木省三 〒920-8621 金沢市小坂町中83 浅ノ川総合病院外科
受理年月日
2008年6月18日
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