原著
肝切除術における腹腔ドレーン抜去時期に関する検討
松田 常美1)2), 竹村 茂一2), 大場 一輝2), 上西 崇弘2), 小川 雅生2), 市川 剛2), 高台 真太郎2), 新川 寛二2), 田中 宏3), 久保 正二2)
大阪市立大学医学部附属病院安全管理対策室1), 大阪市立大学大学院肝胆膵外科学2), 東住吉森本病院外科3)
はじめに:肝切除施行例における腹腔ドレーンの管理法について検討した.対象と方法:肝切除術中に閉鎖式ドレーンが留置された104例を術後4日目以内腹腔ドレーン抜去72例(短期間留置群)と術後5日目以降抜去32例(長期間留置群)に分類し,ドレーン留置期間延長の要因や術後合併症の観点から肝切除術における適切な腹腔ドレーン抜去時期について検討した.なお,腹腔ドレーンは胆汁混入がみられない(総ビリルビン値5 mg/dL未満)場合,抜去した.結果:腹腔ドレーン長期間留置に関わる因子は,単変量解析によると腫瘍径(大型腫瘍),1区域以上切除,手術時間,術中出血量,術後4日目のドレーン排液量(200 mL以上)で,多変量解析によると手術時間,術中出血量およびドレーン排液量が独立因子であった.胆汁漏は短期間留置群の2例にみられ,そのうち1例に腹腔内感染が発症した.創感染は両群のそれぞれ1例に,難治性胸腹水は短期間留置群の2例にみられたが,両群のそれら術後合併症の頻度に差はみられなかった.まとめ:肝切除例において,手術時間,術中出血量および術後4日目のドレーン排液量が腹腔ドレーン長期留置に関わる独立した因子であった.胆汁混入がみられない場合,腹腔ドレーンの術後4日目以内抜去は妥当であると考えられた.
索引用語
liver resection, abdominal drainage, bile leakage, intraabdominal infection, ascites
別刷請求先
久保 正二 〒545-8585 大阪市阿倍野区旭町1-4-3 大阪市立大学大学院肝胆膵外科学
受理年月日
2008年7月23日
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