症例報告
胃癌術後2年目に視力低下にて発症した髄膜癌腫症の1例
高橋 遍, 木下 平, 小西 大, 中郡 聡夫, 高橋 進一郎, 後藤田 直人
国立がんセンター東病院上腹部外科
症例は62歳の男性で,食道浸潤を伴う胃噴門部の3型胃癌に対し左開胸開腹胃全摘,下部食道および脾臓合併切除術後2年1か月目に視力低下および後頸部痛が出現した.CA19-9の上昇を認めたが,画像検査上は明らかな再発所見は認めなかった.その後,症状増悪を認めたため,髄膜癌腫症を疑い髄液細胞診を施行したが初回検査時はclass IIであった.失明や意識障害など種々の脳症状,脳神経症状を伴いながら全身状態は急速に悪化し,症状出現から4か月目に死亡した.剖検では脳硬膜および大脳・小脳・延髄・脊髄表面に癌細胞の浸潤像を認め髄膜癌腫症と診断した.脳底部にて露出した視神経にも浸潤像を認め,失明の原因として矛盾しないものであった.本例のように,術後経過中に画像診断などの検査所見からは説明の付かない脳症状や脳神経症状を認めた際には,髄膜癌腫症の可能性を念頭におき,髄液細胞診を含めた検査を行う必要があると考えられた.
索引用語
leptomeningeal carcinomatosis, loss of eyesight, gastric cancer
別刷請求先
高橋 遍 〒277-8577 柏市柏の葉6-5-1 国立がんセンター東病院上腹部外科
受理年月日
2008年9月24日
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