症例報告
診断に苦慮したポリープ様の発育形態を示した頸部食道小細胞癌の1例
渡辺 剛, 伊丹 淳, 近藤 正人, 宮本 心一1), 吉澤 明彦2), 坂井 義治
京都大学消化管外科, 同 消化器内科1), 同 病理診断部2)
症例は58歳の女性で,主訴は嚥下困難.平成17年12月より食事摂取時の咽頭痛を自覚し,その後,嚥下困難が出現した.嚥下困難は徐々に増悪し,平成18年3月には,固形物の摂取が不可能となった.食道腫瘤は頸部食道内腔を占め,長径約5 cm,表面は正常粘膜に覆われた茎を有するポリープ様の形態であった.CT,MRIにて周囲浸潤像を認めず,生検にて悪性所見を認めなかったことから,良性食道ポリープと診断し内視鏡的ポリープ切除を施行した.病理組織学的検査結果は小細胞癌であった.術後6か月に局所再発を認め,30 Gyの照射単独で完全寛解となり,以後,現在まで新たな再発を認めず生存中である.内腔を占居するような発育形態を示す頸部食道ポリープは,そのほとんどが良性腫瘍とされる.しかし,頻度は少ないが,ポリープ様形態を示す,いわゆる特殊型の悪性腫瘍が存在することを念頭におき,鑑別診断をする必要がある.
索引用語
small cell carcinoma, esophageal polyp, endoscopic resection
別刷請求先
渡辺 剛 〒606-8273 京都市左京区北白川山ノ元町47 日本バプテスト病院外科
受理年月日
2008年10月22日
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