症例報告
脾動脈塞栓術後に発達した側副血行路と静脈瘤により胃出血を発症した1例
横山 貴司, 渡辺 明彦, 右田 和寛, 中川 顕志, 井上 隆, 向川 智英, 大山 孝雄, 石川 博文
奈良県立奈良病院外科
症例は46歳の女性で,41歳時(2002年5月)に脾損傷に対して脾動脈塞栓術を受けた.2007年7月より全身倦怠感出現,近医にて著明な貧血(Hb 2.9 g/dl)を指摘された.内視鏡検査で胃穹窿部後壁に血管増生の著明な粘膜下腫瘍を認めた.CTで粘膜下腫瘍はなく,穹窿部後壁に壁肥厚と豊富な血流を認め,脾臓が接していた.胃全摘術,脾臓摘出術が必要と説明され,セカンドオピニオン目的に当科を受診した.血管造影検査では脾動脈は下部脾臓を栄養するのみで,上中部脾臓は左下横隔動脈噴門枝から胃壁を介する側副血行路により栄養されていた.以上より,側副血行路とそれにより発生した静脈瘤の破綻による胃出血と診断し,左下横隔動脈結紮術,脾臓摘出術を施行した.術後1か月および6か月目の胃内視鏡検査で病変部は消失していた.脾損傷に対する脾動脈塞栓術後の左下横隔動脈による胃出血は非常にまれな病態であるが,血管造影検査が診断に有用であったので報告する.
索引用語
gastric bleeding, splenic artery occlusion, collateral
別刷請求先
横山 貴司 〒573-8511 枚方市星丘4-8-1 星ヶ丘厚生年金病院外科
受理年月日
2008年12月17日
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