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第42巻 第6号 2009年6月 [目次] [全文 ( PDF 603KB)]
症例報告

肝嚢胞と診断され経過観察されていた肝嚢胞腺癌の1例

伊藤 忠雄, 野口 明則, 齊藤 朋人, 中島 慎吾, 生駒 大登, 清水 健, 谷 直樹, 山口 正秀, 岡野 晋司, 山根 哲郎

松下記念病院外科

 症例は59歳の女性で,2年半前に他院で肝嚢胞と診断され経過観察されていた.腹部膨隆症状が出現してきたため当院内科を受診され,CT,MRIで肝右葉に最大径22 cmの嚢胞性病変を認めた.嚢胞内腔はほぼ平滑で1か所に壁在結節が疑われたが造影効果は認められなかった.肝嚢胞腺癌の疑いにて肝右葉切除術を行ったが,切除標本の肉眼検査所見では,嚢胞壁は平滑で明らかな壁在結節を認めず肝嚢胞と診断した.病理組織学的検査で高分化型腺癌が嚢胞壁全体にほぼ単層性に広がり,一部に乳頭状増生を認めたため肝嚢胞腺癌と診断された.腺腫からの移行部も確認され,嚢胞腺腫からの癌化と推察された.検診などで無症状の肝嚢胞性病変が見つかる機会が増えているが,画像上は肝嚢胞と鑑別困難な肝嚢胞腺癌もあり,注意深い経過観察が必要であると思われる.

索引用語
biliary cystadenocarcinoma, biliary cystadenoma, liver cyst

日消外会誌 42: 651-656, 2009

別刷請求先
伊藤 忠雄 〒570-8540 守口市外島町5-55 松下記念病院外科

受理年月日
2008年12月17日

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