食道浸潤胃癌に対する手術アプローチの検討―開胸か開腹経横隔膜か―

布部　創也, 大山　繁和, 徳永　正則, 比企　直樹, 福永　哲, 瀬戸　泰之, 山口　俊晴

癌研有明病院消化器外科

　背景：1995年から始まった全国規模の開胸と非開胸手術を比較する無作為化比較試験の影響から，食道浸潤胃癌に対して縦隔リンパ節郭清を伴う開腹経横隔膜アプローチで行う症例が増加してきている．今回，アプローチ別の治療成績，周術期成績を比較検討し，至適アプローチ，縦隔リンパ節郭清の是非について考察した．方法：対象は1995年1月から2004年12月まで，縦隔リンパ節郭清を伴う胃切除を施行した食道浸潤胃癌81例（開胸アプローチ（Transthoracic；以下，TT）：51例），開腹経横隔膜アプローチ（Transabdominohiatal；以下，TAH）：30例）．TTとTAHの治療成績，周術期成績を臨床病理組織学的に比較検討した．結果：手術時間はTTと比較しTAHは有意に短く（P＜0.001），また出血量もTAHが少ない傾向にあった（P=0.054）．食道浸潤距離，肉眼型，壁深達度，リンパ節転移程度，病理組織学的病期に有意差はなかった．縦隔リンパ節転移はTTに9例（18％），TAHに6例（20％）認められた．術後短期合併症は呼吸器合併症も含め有意差なし．3年生存率は，TT：59.0％，TAH：59.1％で，両群に有意差は認められなかった（P=0.808）．縦隔リンパ節転移例の生存期間は有意差なく（P=0.143），TAHの2例に4年以上の長期生存を認めた．考察：治療成績，合併症発生率において両群に有意な差は見られず，TAHは手術浸襲を軽減しうる有用なアプローチと考えられた．縦隔リンパ節転移陽性例に長期生存例が見られ，TAHで手術を行う際にも縦隔リンパ節郭清は意義があると考えられた．

索引用語
advanced gastric cancer, esophageal invasion, transthoracic approach, transabdominohiatal approach

別刷請求先
布部　創也　〒113-8677　文京区本駒込3-18-22　都立駒込病院外科

受理年月日
2008年12月17日

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