症例報告
重症急性膵炎を呈した腎細胞癌膵転移の1例
浅野 賢道, 岩井 和浩, 狭間 一明, 川崎 亮輔, 妻鹿 成治
王子総合病院外科
症例は56歳の男性で,1999年に腎細胞癌にて左腎部分切除術,2005年に肺転移に対し肺部分切除術を受けている.2006年6月上旬,上腹部痛を主訴に近医に入院した.入院後,急性心筋梗塞を発症し当院に紹介となる.血清アミラーゼの高値(1,883 IU/L)を呈し,腹部造影CT上,膵臓の腫大と網嚢腔および左腎周囲への液体貯留を認め,重症急性膵炎と診断した.ただちに,メシル酸ナファモスタットとイミペネムの動注を行った.症状が改善した後,精査を行ったところ腹部造影CTにて膵頭部に良好に造影される3 cm大の腫瘍を認めた.以上より,腎細胞癌膵転移を疑い,8月下旬,膵頭十二指腸切除術およびnecrosectomyを施行した.病理組織学的検査の結果,膵頭部腫瘍は腎細胞癌膵転移であった.術後2年が経過しているが,現在までのところ再発は認めていない.腎細胞癌の膵転移により重症急性膵炎を呈することは極めてまれである.文献的考察を加え報告する.
索引用語
metastasis-induced acute pancreatitis, pancreatic metastasis, renal cell carcinoma
日消外会誌 42: 1837-1842, 2009
別刷請求先
浅野 賢道 〒053-8506 苫小牧市若草町3-4-8 王子総合病院外科
受理年月日
2009年4月22日
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