症例報告
イレウスを呈したプロテインS欠乏症による上腸間膜静脈血栓症の1例
浅野 賢道, 岩井 和浩, 狭間 一明, 川崎 亮輔, 妻鹿 成治
王子総合病院外科
症例は66歳の男性で,腹痛,嘔吐を主訴に平成18年1月前医を受診し,急性腹症の診断にて入院となった.腹部造影CTにて上腸間膜静脈の血栓および小腸壁の肥厚を認めた.凝固線溶系検査の結果,プロテインS欠乏症が明らかになり,プロテインS欠乏症による上腸間膜静脈血栓症と診断した.抗凝固療法を行い症状は改善したがイレウスを発症したため,当院に転院となった.イレウス管による保存的加療を行うが改善せず,開腹手術を施行した.狭窄部はTreitz靭帯より120 cmの部位1か所のみであったため,狭窄部を中心に10 cmの小腸を切除した.術後経過は良好であり,ワーファリンおよびバイアスピリンによる抗凝固・抗血小板療法を開始し,術後19日目に退院となった.プロテインS欠乏症による上腸間膜静脈血栓症の本邦報告例はこれまで12例しかなくまれである.文献的考察を加え報告する.
索引用語
protein S deficiency, superior mesenteric vein thrombosis, ileus
別刷請求先
浅野 賢道 〒053-8506 苫小牧市若草町3-4-8 王子総合病院外科
受理年月日
2009年6月18日
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