症例報告
経過観察中に右心房内腫瘍栓を形成し肺血栓塞栓症を発症した肝細胞癌の1切除例
京兼 隆典, 弥政 晋輔, 澤崎 直規, 東島 由一郎, 後藤 秀成, 渡邉 博行, 高木 健裕, 松田 眞佐男
社会保険中京病院外科
症例は64歳の女性で,HBs抗原陽性のため経過観察中,2006年9月,肝S7に径15 mmの腫瘤が指摘されたが,患者が精査治療を拒否したため経過観察となっていた.2007年4月突然の呼吸困難で発症し,当院救急外来に搬送された.心USで右心系の拡大と右心房に腫瘤が指摘され,縦隔造影CTで右肺動脈に肺塞栓が認められた.血栓溶解療法後腹部精査を行い,肝S7の肝細胞癌が右肝静脈から右心房へ腫瘍栓を形成し,それによる血流障害で血栓が形成され,肺血栓塞栓症を発症したと考えた.肝右葉切除,腫瘍栓抜去術を施行.肝離断後,右葉を尾側に牽引することにより腫瘍栓も尾側へ移動し,心嚢内下大静脈でクランプが可能であったが,クランプにより血圧低下したためveno-venous bypassを併用した.術後経過は良好.12か月後に多発性肺転移を来した.術後24か月が経過したが,良好なquality of lifeのもと生存中である.肺血栓塞栓症で発症した下大静脈,右心房内腫瘍栓を有する肝細胞癌は,今までに報告例がない.
索引用語
hepatocellular carcinoma, intraatrial tumor thrombus, pulmonary embolism
別刷請求先
京兼 隆典 〒437-0061 袋井市久能2515-1 袋井市立袋井市民病院外科
受理年月日
2009年9月16日
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