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第43巻 第4号 2010年4月 [目次] [全文 ( PDF 799KB)]
症例報告

外鼡径ヘルニア嚢内に発生した外性子宮内膜症の1例

清水 智治, 龍田 健, 村田 聡, 山本 寛, 山口 智弘, 高島 明子1), 樽本 祥子1), 松原 亜季子2), 九嶋 亮治2), 谷 徹

滋賀医科大学外科学講座, 同 女性診療科1), 同 臨床検査部病理2)

 26歳の女性で,4年前より子宮内膜症既往がある.1年前から左鼡径部に月経周期に伴い症状が変化する有痛性腫瘤を自覚していた.CT,MRIでは左鼡径部に辺縁に造影効果のある多房性嚢胞を認めた.左鼡径部の外性子宮内膜症を疑った.全身麻酔下に右卵巣内膜症性嚢胞に対して腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術と鼡径部腫瘤摘出手術を行った.腹腔内から左内鼡径輪開存を観察し,前方アプローチにて鼡径管を開放すると暗赤色の腫瘤をヘルニア嚢内に確認した.ヘルニア嚢を高位結紮し,Marcy法にてヘルニア門を閉鎖した.病理組織学的検査では,ヘルニア嚢内に子宮内膜症の組織像を認めた.術後12か月経過後も左鼡径部腫瘤の再発は認めていない.本邦での鼡径部外性子宮内膜症160例を集計したところ,ヘルニア嚢内に発生したのは34例であった.女性の鼡径部腫瘤の診断の際には,鼡径ヘルニアの鑑別診断の一つとして本症も考慮すべきであると思われた.

索引用語
inguinal hernia, Nuck duct, female

日消外会誌 43: 466-471, 2010

別刷請求先
清水 智治 〒520-2192 大津市瀬田月輪町 滋賀医科大学外科学講座

受理年月日
2009年9月16日

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