症例報告
日本住血吸虫卵塞栓が示唆された回盲部壊死型虚血性腸炎の1例
島田 雅也, 芝原 一繁, 北村 祥貴, 森山 秀樹, 羽田 匡宏, 竹原 朗, 佐々木 正寿, 小西 孝司, 前田 宜延*
富山赤十字病院外科, 同 病理科*
症例は66歳の男性で,青年期に富山県・石川県での河川釣りの既往がある.腹痛を主訴に入院.発熱と,右下腹部の圧痛を認め,血液検査で炎症反応の高値を認めた.CTにて,上行結腸腫瘤状壁肥厚・盲腸の10 cm大の拡張と壁内気腫・回盲部腸間膜脂肪織濃度上昇を認め,上行結腸癌間膜穿通などを疑い,準緊急手術を施行.術中所見では,Bauhin弁肛門側に60 mm大半周性軟腫瘤を認める一方,盲腸のみが緊満し壁内気腫を伴う緑色壊死に陥っていた.腸間膜は炎症性に肥厚.上行結腸癌による腸間膜膿瘍と盲腸壊死と診断し,結腸右半切除術を施行.病理組織学的検査所見は,上行結腸腫瘤は絨毛腺腫内癌であったが,盲腸は虚血性壊死を呈しており,粘膜下層静脈周囲に石灰化した日本住血吸虫を疑う虫卵を認めた.以上より,本例の病態は,日本住血吸虫卵塞栓による静脈鬱滞性虚血性腸炎が示唆された.まれな日本住血吸虫卵が関与したと考えられた壊死型虚血性腸炎の1例を経験したので報告した.
索引用語
schistosoma japonicum, necrosis, ischemic colitis
別刷請求先
島田 雅也 〒930-0859 富山市牛島本町2-1-58 富山赤十字病院外科
受理年月日
2009年9月16日
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