症例報告
直腸と肛門管における衝突癌の1手術例
山口 恵実, 山本 佳生, 佐藤 崇, 槙野 好成, 内田 正昭, 石川 典由*, 丸山 理留敬*
松江生協病院外科, 島根大学医学部器官病理学*
症例は48歳の男性で,肛門痛を主訴に受診した.内視鏡検査で下部直腸に3 cm大のポリープ状腫瘤を認め,一部肛門上皮への浸潤を疑った.生検で高~中分化型腺癌と診断され,18F-fluorodeoxy-glucose positron emission tomography/CTを含む各種画像検査で明らかな遠隔転移を認めなかった.よって,肛門浸潤を伴う直腸癌と診断し,腹会陰式直腸切断術およびリンパ節郭清術(D3)を施行した.切除標本で,歯状線上に1型腫瘤を認め,割面では腫瘤と連続して壁内に占居する腫瘤状病変を認めた.組織診断は,前者が直腸由来の高~中分化型腺癌,後者が低分化の部分が主体の肛門管由来の腺癌で,直腸癌と肛門管癌の衝突腫瘍であった.衝突腫瘍は肺や胃に発生した症例が散見されるが,検索しえた範囲内で大腸での本邦報告例は本症例を含め16例であり,直腸と肛門から発生した衝突例は極めてまれであった.
索引用語
collision tumor, rectal cancer, anal canal cancer
別刷請求先
山口 恵実 〒690-8552 松江市西津田8-8-8 松江生協病院外科
受理年月日
2009年11月18日
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