症例報告
術中内視鏡にて病変部位を確定しえた空腸gastrointestinal stromal tumorに合併した回腸vascular ectasiaの1例
金澤 伸郎, 吉田 孝司, 三井 秀雄, 飯塚 童一郎, 新井 冨生*, 黒岩 厚二郎
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター外科, 同 臨床病理科*
症例はタール便と高度の貧血を認めたため緊急入院となった84歳の男性で,上部,下部消化管内視鏡検査では明らかな出血部位は同定できなかった.腹部骨盤造影CT,および出血シンチグラフィーにて回盲部付近,および口側小腸の最低2か所の出血源が予測された.出血のコントロールがつかず頻回の輸血を要したこと,これ以上の術前検査を行う体力的,時間的余裕がなかったため,患者に十分な説明,同意を得たうえで開腹止血術を施行した.術中内視鏡検査を付加したことにより,出血源として空腸gastrointestinal stromal tumor以外に回腸のvascular ectasiaを同定することができ,これら2か所を切除することにより治癒可能であった.同病変は内視鏡検査以外では同定不可能であった.可能なかぎり,小腸出血の診断・治療に際しては腫瘍性病変の有無にかかわらず,内視鏡検査による全小腸の観察が強く望まれる.
索引用語
vascular ectasia, GIST, intraoperative enteroscopy
別刷請求先
金澤 伸郎 〒173-0015 板橋区栄町35-2 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター外科
受理年月日
2009年10月28日
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