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第43巻 第8号 2010年8月 [目次] [全文 ( PDF 776KB)]
症例報告

直腸に発生した指状嵌入細胞肉腫の1例

渋谷 雅常, 寺岡 均, 中尾 重富, 玉森 豊, 新田 敦範, 筑後 孝章

馬場記念病院外科, 近畿大学医学部病理学教室

 症例は76歳の男性で,主訴は排便困難であった.直腸診で弾性硬の腫瘤を触知した.下部消化管内視鏡検査で同部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の半周性の腫瘍を認めた.生検の結果,悪性間葉系腫瘍を疑われ,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織学的検査所見では,いびつで深く切れ込んだ核と広い胞体からなる異型細胞がびまん性に増殖し,細胞相互の接合性に乏しく多数の核分裂像を認めた.免疫組織染色検査にて,CD68,CD99,S-100,vimentinが陽性,CD1a,CD3,CD79a,CD117,fascin,SMA,HLA-DR,EBER-ISHは陰性,電子顕微鏡像ではBirbeck顆粒は認められなかった.以上より,指状嵌入細胞肉腫と診断された.残存する大動脈周囲の病変に対し化学療法を施行中で,術後8か月縮小傾向を認めている.本腫瘍は過去に世界で約50例が報告されているにすぎない.消化管に発生した報告は,本邦では2例目で,下部消化管に発生した報告は本例が最初であると考えられる.

索引用語
rectum, interdigitating dendritic cell sarcoma (IDCS)

日消外会誌 43: 857-862, 2010

別刷請求先
渋谷 雅常 〒592-8555 堺市西区浜寺船尾町東4-244 馬場記念病院外科

受理年月日
2010年1月27日

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