症例報告
食道癌術後に第VIII凝固因子インヒビターによる後天性血友病を発症した1例
川崎 健太郎, 大澤 正人, 小林 巌, 中山 俊二, 金治 新悟, 仁和 浩貴, 大野 伯和, 藤野 泰宏, 富永 正寛, 中村 毅
兵庫県立がんセンター消化器外科
症例は55歳の男性で,食道癌に左開胸開腹下部食道噴門側胃切除(well diff. adenocarcinoma, Ae, 10 mm, T1aMM, n0, M0, stage 0)を施行した.周術期に出血傾向はなかった.術後53日目(53 POD)右股関節が腫脹,その後右背部も腫脹してきたため64 P0D当院を受診した.Hb 7.5 g/dlと貧血を認め緊急入院となった.CTで右腸腰筋から右股関節,背部の筋肉内に広範な出血を認めた.PTが軽度,APTTが高度に延長していた.輸血,FFPで経過を観察したが出血は持続,71 POD血管造影にて塞栓術を行った.しかし,貧血は進行,第VIII凝固因子活性が1%以下と判明したため全身疾患を疑い転院となった.精査の結果,第VIII凝固因子インヒビターによる後天性血友病であり,第VII凝固因子製剤によるBy-pass療法とステロイドで軽快した.消化器癌術後の凝固因子インヒビターによる出血はまれな疾患であるが,重篤な結果を招くこともあり,本疾患に対する認識と迅速な対応が必要であると思われた.
索引用語
acquired hemophilia, inhibitor against coagulation factor VIII, esophageal cancer
別刷請求先
川崎健太郎 〒673-8558 明石市北王子町13-70 兵庫県立がんセンター消化器外科
受理年月日
2010年1月27日
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