原著
大腸穿孔例の術前の予後判定因子と術後合併症の検討
陳 尚顯1)2), 藤田 竜一1), 河 喜鉄1), 産形 麻美子1)2), 多田 祐輔1), 村田 順1), 亀岡 信悟2)
朝霞台中央総合病院外科1), 東京女子医科大学第2外科学2)
目的:大腸穿孔の治療戦略を立てるため,予後を判定する術前因子を検討し,また予後を改善するため,死因に関連ある因子と術後合併症を検討したので報告する.方法:2004年1月から2008年8月までに緊急手術を施行した大腸穿孔症例35例を対象とした.年齢,術前合併症,穿孔原因と部位,白血球数,クレアチニン(Cr),プロトロンビン時間(PT),Base excess(BE),体温,血圧,APACHE II score(以下,AS),手術までの時間,腹腔内の汚染度,術式,および術後合併症の有無を救命例と死亡例で比較検討した.結果:救命例は27例,死亡例は8例で,死亡率は23%であった.単変量解析では術前の予後判定因子はCr,PT,BE,体温,血圧,AS,腹腔内の汚染度であった.ロジスティック回帰を用いた多変量解析ではASだけが有意に予後不良であった(相対危険率1.89,p=0.005).AS 20以上の症例は死亡率83%であり,20未満の症例の死亡率10%と比べて有意に予後が不良であった(p=0.001).腹腔内感染,菌血症や肺炎の術後感染症を有する群の死亡率は53%で,有さない群は0%であり,また,disseminated intravascular coagulation(DIC)を有する群の死亡率は80%で,有さない群は13%であり,術後感染症やDICの合併は有意に予後が不良であった(それぞれp<0.001,p=0.006).考察:ASは有意な予後判定因子と考えられた.術後感染症のコントロールが予後を改善する可能性が示唆された.
索引用語
colorectal perforation, APACHE II score, intraperitoneal infection, bacteremia, DIC
日消外会誌 43: 1007-1013, 2010
別刷請求先
陳 尚顯 〒351-8551 朝霞市西弁財1-8-10 朝霞台中央総合病院外科
受理年月日
2010年2月17日
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