症例報告
胆嚢癌術後に乳び尿を来し治療に難渋した1例
樋口 亮太, 太田 岳洋, 竹下 信啓, 梶山 英樹, 谷澤 武久, 小貫 建一郎, 矢川 陽介, 濱野 美枝*, 新井田 達雄*, 山本 雅一
東京女子医科大学消化器外科, 東京女子医科大学八千代医療センター外科*
症例は58歳の女性で,右肝動脈,門脈と胆管浸潤を伴う胆嚢癌に対し経皮経肝的門脈塞栓術後に肝右葉切除兼肝外胆道切除,門脈合併切除再建術を行った.大きな合併症なく術後26日目に退院したが,術後50日目頃より白濁尿が出現し,脱水,電解質異常のため再入院した.対症療法にて1度退院したが息切れと食思不振のため再々入院した.分腎機能検査にて左腎盂尿は正常であったが,右腎盂尿は蛋白2+/糖2+で,膀胱鏡で右尿管口からの乳び尿の噴出を認めた.フィラリア感染は陰性であった.胆嚢癌手術の影響により,右腎盂レベルにてリンパ瘻から乳び尿を来したと診断し,右腎門部リンパ管遮断術を行った.術後血清Na,蛋白尿や尿の混濁は正常化し,腹水や下腿浮腫も軽減した.文献検索においても,胆道癌やその他腹部手術後に乳び尿が発生した報告は極めて少なく貴重な症例と思われ報告する.
索引用語
chyluria, biliary cancer, hepatectomy
日消外会誌 43: 1031-1036, 2010
別刷請求先
樋口 亮太 〒162-8666 新宿区河田町8-1 東京女子医科大学消化器外科
受理年月日
2010年2月17日
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