症例報告
腎移植後被嚢性腹膜硬化症による腸閉塞で手術を要した1例
錦 建宏, 北田 秀久, 土井 篤, 三浦 敬史, 栗原 啓, 田中 雅夫
九州大学臨床・腫瘍外科
腎移植3年後に被嚢性腹膜硬化症(Encapsulated Peritoneal Sclerosis;以下,EPS)による腸閉塞で手術を要した1例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,14年間の腹膜透析歴を有し,2004年5月に献腎移植を施行した.腎機能は良好だったが,3年後にEPSによる腸閉塞を繰り返し,内科的治療は困難と判断し,外科的治療を施行した.開腹後,骨盤内に硬化性偽膜に包まれた腸管が白色の塊を形成し癒着していたため,偽膜を剥離し癒着を解除した.経過良好で術後13日目退院となった.EPSの治療は,腸管安静,ステロイド,免疫抑制剤などが基本だが,内科的治療に抵抗する腸閉塞症状がある場合,腸管癒着剥離を基本とする外科的介入が必要となる.また,腹膜透析後の腎移植は,ステロイド,免疫抑制剤の服用にもかかわらず,EPSを増悪させるとの報告があり,腹膜透析患者に対する腎移植はEPSの進行を念頭に入れ,腸閉塞症状が高度となった場合は,外科的治療も検討する必要がある.
索引用語
renal transplantation, peritoneal dialysis, encapsulating peritoneal sclerosis (EPS)
日消外会誌 43: 1048-1053, 2010
別刷請求先
錦 建宏 〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学臨床・腫瘍外科
受理年月日
2010年3月24日
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