症例報告
胸腔内に小腸穿孔を来した成人Bochdalek孔ヘルニアの1例
芦川 和広, 片山 真史*, 神尾 浩司*, 朝野 隆之*, 小森山 広幸*
裾野赤十字病院外科, 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院一般外科*
成人に発症したBochdalek孔ヘルニアの胸腔内小腸穿孔の手術例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,腹痛,嘔吐,下痢を主訴として当院受診し急性腸炎,麻痺性イレウスを疑い入院した.発症後5日目にCTによって左横隔膜ヘルニア,小腸嵌頓による腸管壊死・左胸腔内への穿破と診断し,緊急手術を施行した.開腹すると回腸が左胸腔内に40 cmほど嵌入しておりヘルニア門での絞扼により小腸穿孔を来していた.手術所見よりBochdalek孔ヘルニアと診断した.脱出していた回腸は虚血壊死を認め部分切除術を行い,胸腹腔内の洗浄,ドレーンを挿入しBochdalek孔を修復閉鎖した.術後膿胸となったが,術後第17病日に胸膜剥皮術を施行し軽快した.成人Bochdalek孔ヘルニアはまれであるが,消化管の胸腔内嵌入・穿孔はさらにまれである.重篤な病態でありCTですみやかに診断し,手術を施行するべきと考える.
索引用語
Bochdalek hernia, adult Bochdalek hernia, perforation
日消外会誌 43: 1054-1058, 2010
別刷請求先
芦川 和広 〒410-1118 裾野市佐野713 裾野赤十字病院外科
受理年月日
2010年3月24日
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