原著
悪性腹膜中皮腫の検討
西 英行, 鷲尾 一浩, 河合 央*, 大村 泰之*, 間野 正之*
岡山労災病院アスベスト疾患ブロックセンター, 同 外科*
はじめに:悪性腹膜中皮腫はまれな疾患であるが,遭遇する頻度は増加している.症例数が少なく,その経過,診断,治療方針に関して明らかにされていない.今回,我々は12例を経験したので,その臨床病理,石綿ばく露の関与について検討した.方法:1993年1月~2009年3月までに岡山労災病院アスベスト疾患ブロックセンターで診断・加療した悪性腹膜中皮腫12例を対象とした.結果:男性10例,女性2例で,平均年齢は66歳であった.石綿ばく露歴を11例(91.7%)に認め,職種別では造船業,石綿製造業の占める割合が高く,石綿肺や胸膜プラークの合併より石綿ばく露の関与が示唆された.確定診断は,10例(83.3%)が開腹または腹腔鏡による生検で得られた.組織型は上皮型11例(91.7%),二相型1例(8.3%)であった.主な治療は,化学療法が10例(83.4%),手術療法は1例(8.3%)に行われた.予後は,生存期間中央値は12.0か月で,2年生存率は19.3%であった.考察:発生にはアスベストばく露が強く関与すると考えられた.解剖学的に根治手術は困難であり,局所制御や転移を防ぐために,各種治療法の組み合わせによる,治療法の確立を急ぐ必要がある.
索引用語
malignant peritoneal mesothelioma, diagnosis and treatment, asbestos exposure
日消外会誌 43: 1098-1105, 2010
別刷請求先
西 英行 〒702-8055 岡山市南区築港緑町1-10-25 岡山労災病院
受理年月日
2010年4月28日
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