症例報告
胃と横行結腸が同時に嵌入した成人両側胸骨後ヘルニアに対して腹腔鏡下手術を施行した1例
森 洋一郎, 春日井 貴雄, 榊原 一貴
大垣徳洲会病院外科
症例は87歳の女性で,繰り返す嘔気・嘔吐,心窩部痛を主訴に当科を初診となった.腹部CTでは胃前庭部から十二指腸球部が右胸腔内へと脱出しており,通過障害のため胃は著明に拡張していた.さらに,横行結腸が左胸腔内へと脱出しており,胃と横行結腸の嵌入を同時に伴う両側胸骨後ヘルニアと診断した.嵌入臓器は立位にて自然に還納するが,仰臥位にて容易に再嵌入し通過障害が再燃するため,手術適応と判断し腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると,胸骨後部の横隔膜に左右二つのヘルニア門を認め,術前の検査結果とは異なり横行結腸が右側ヘルニア嚢内に脱出していた.横行結腸は容易に腹腔内へと還納でき,左右のヘルニア門をComposix meshを用いて閉鎖した.術後経過は良好で,現在無再発経過観察中である.成人に発症した両側胸骨後ヘルニアは横隔膜ヘルニアの中でも非常にまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語
laparoscopic surgery, bilateral retrosternal hernia, diaphragmatic hernia
日消外会誌 43: 1176-1182, 2010
別刷請求先
森 洋一郎 〒503-0015 大垣市林町6-85-1 大垣徳洲会病院外科
受理年月日
2010年4月28日
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