症例報告
腹部外傷受傷から1年後に結腸回腸瘻を来した1例
大目 祐介, 河本 和幸, 桐野 泉, 岡部 道雄, 伊藤 雅, 小笠原 敬三
倉敷中央病院外科
鈍的腹部外傷後1年後に,遅発性結腸狭窄,結腸回腸瘻を来した1例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で,交通事故による腸間膜損傷疑いに対して,保存的加療を行った.1年後イレウス症状が出現し,当院紹介となった.保存的加療を行うも改善を認めなかった.下部消化管内視鏡,注腸造影検査を施行し,S状結腸小腸瘻と診断した.S状結腸および回腸部分切除術,S状結腸人工肛門造設術を施行した.腹部外傷では腸管損傷,腸間膜損傷がしばしば認められるが,腹部外傷後の遅発性結腸狭窄は非常にまれであり,また結腸小腸瘻については,これまで本邦における報告はない.腹部外傷の既往がある患者に,イレウス症状を認めた場合,遅発性腸管狭窄を念頭において精査を進める必要がある.また,本症例のように瘻孔を形成していることもあり,診断には小腸・注腸造影検査が有用と考えられる.
索引用語
abdominal trauma, delayed bowel stenosis, ileocolic fistula
日消外会誌 43: 1282-1287, 2010
別刷請求先
大目 祐介 〒710-8602 倉敷市美和1-1-1 倉敷中央病院外科
受理年月日
2010年5月19日
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