症例報告
慢性上腸間膜動脈閉塞に対し脾動脈・上腸間膜動脈バイパス術を施行した1例
金城 洋介, 吉冨 摩美, 韓 秀炫, 山本 秀和
大阪府済生会泉尾病院外科
症例は62歳の男性で,食後の腹痛を主訴に来院した.腹部造影CTにてsuperior mesenteric artery(以下,SMA)根部から2 cmに及ぶ閉塞を認めた.腹部血管造影にてSMAの根部は閉塞し,末梢側は総肝動脈・胃十二指腸動脈・背側膵動脈からの発達した側副血行路が血流を供給しており慢性SMA閉塞と診断した.絶飲食で症状は改善したが食事を再開すると腹痛を繰り返すため治療の適応があると判断し,血管内治療より長期開存率に優るバイパス手術を選択した.過去の報告でSMAバイパス術は腹部大動脈や腸骨動脈との吻合が多いが,本症例ではどちらも石灰化や狭窄が著しく吻合のリスクが高いと判断した.超音波ドプラを用いて脾動脈の術前評価を行い,脾動脈・SMAバイパス術を施行し,臨床症状の改善を得た.SMAバイパスのinflowとして大動脈や腸骨動脈の条件が悪い場合,脾動脈を選択することも可能である.
索引用語
chronic mesenteric ischemia, mesenteric artery occlusion
日消外会誌 43: 1288-1292, 2010
別刷請求先
金城 洋介 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学消化管外科
受理年月日
2010年5月19日
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