会長挨拶

第61回日本消化器外科学会定期学術総会開催にあたって
会長:幕内 博康(東海大学医学部外科学)
第61回日本消化器外科学会定期学術総会を平成18年7月13、14、15日の3日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催させていただきます。
本学会は、昭和43年に設立され、38年の歴史と22,000名の会員を擁し、学術集会の参加者も6,000名を越える世界最大の消化器外科の学会であります。私共の教室では平成7年先代の三富利夫名誉教授が第45回学会総会を主宰させて頂いておりますが、11年ぶりに再び本学会をお世話させていただくことは、私はもとより教室また東海大学の大きな喜びであり、大変光栄に存じております。
さて、今回のテーマを“多岐亡羊から外科本道へ”と致しました。近年、消化器疾患の診断・治療は著しい進歩を遂げ、病態・生理の解明が進み、新しい診断法・診断技術が開発されています。特に、分子生物学的アプローチには目を見張るのものがあります。治療面でも各種抗腫瘍薬の開発が進み、放射線治療においては機器の進歩と共に正確なシミュレーションが行われるようになってきています。これらの組み合わせによる化学・放射線療法も広く行われていてかなり良い成績が報告されています。内視鏡的粘膜切除術や内視鏡下手術も普及するようになり、機能温存術や縮小手術、sentinel node navigation surgeryなど外科的治療にも多様性を生じています。さらに各種治療ガイドラインが示される一方で患者に合ったテーラーメイド治療が提唱されています。外科的治療は患者に大きな侵襲を与えるものであり、可能な限り避けるべき治療法でありますが、癌治療の第一選択の地位を明け渡すには未だ長い年月が必要でありましょう。今回、この多岐にわたる治療法の中にあって、ややもすると影が薄くなりつつある外科手術に今一度光を当ててみたいと思います。私は“何でも手術”という外科一辺倒の外科医ではないつもりです。優れた職人気質を持つものは、往々にしてその職能を通してしか世界を見ようとせず、結果的に狭量な価値観と人生観の中に己を追いやってしまう傾向があると思います。種々の治療法に精通する必要がありますし、望むべくは“診断から治療まで一貫した理解”が必要と考えます。しかし、最近の外科手術手技の修得に対する熱意に翳りが見える気も致します。先輩諸兄が血の滲むような努力を重ねてきた手術手技の伝承も大切ですが、それにもまして外科医の本道である物の考え方、手術への考え方を学ぶことを疎かにしてはならないと思います。手術は手先でするものではなく頭で行うものとも思っています。
特別講演、招待講演、教育講演は各方面にお願い致しております。
特別企画として三人の消化器外科の大先輩の鼎談をしていただきます。若い消化器外科医へ人生の進むべき道を示して下さると思います。また、“医療安全を考える”“卒後教育必修化と消化器外科医”を取り上げ、元来危険である医療であり外科治療でありますが、外科医としての考え方、一般国民やマスコミへの啓発を図り、また、なかなか困難である消化器外科医の教育のあり方を示していただきたいと思っています。今回の評議員改選でも90名以上の新評議員が誕生し、世代交代も進んでいます。若手指導者の夢を語っていただく“消化器外科の将来を展望する―若手指導者の期待と構想―”、多数発行されているガイドラインにも問題もあるようで“癌治療ガイドラインの功罪”、そして外科的治療を中心に“この症例をどうする”で実際の困難な症例をどのように対処するかを検討してもらいたい。
シンポジウムでは、現在広く行われているネオアジュバント治療は本当に有効かを明らかにしていただく“消化器癌に対するネオアジュバント治療の功罪”を取り上げました。その他8題を考えています。
パネルディスカッションでは“機能温存手術の評価”“消化器外科と再生医療”他6題、ワークショップでは“同時性異時性重複癌の外科治療”他6題を考えています。焦点を絞った突っ込んだ討論をお願いしたいと思っております。
学会の合間には、最近急激な変化発展を示している横浜で素晴らしいお買い物に、そして中華料理のみならず世界の料理が楽しめることと存じます。是非多数の皆様のご参加をお待ち致しております。 |